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statement

 

 

私は趣味である古着収集やリサイクルショップでのアルバイト経験を通して、劣化や風化などの経年変化に造形美とリアリティを感じ、それらの現象から着想を得た絵画を制作している。

 

大量の物や風景が写真や動画によって共有される現代では、現実世界での固有の価値や出来事から切り離された表層的なイメージがある種の記号として消費され、無限に複製される情報の波に当てられ、物事の価値判断基準を見失ったような感覚がある。

 

多種多様な出来事が同一の画面に並べられ、時には現実の風景すら張りぼてのように感じてしまう状況の中、キャンバスの上に描いた自身の絵もまた、空虚な表層、あるいはイラストという一つの記号として捉え始めた事が、作品制作の動機となっている。

 

「Split painting (スプリットペインティング) 」シリーズは、描いたイメージを塗膜として画面から引き剥がし、それらを熱湯に晒して解体し、再度支持体に貼り付けた絵画である。

オンライン上のフリー素材から選択した人の顔、花などの記号的なイメージは分解されマテリアルとして顕在化する。

 

それはデジタルメディアでは捕える事のできない現実世界の移り変わりを画面上に記録する行為であり、質量を持たない情報に飲み込まれた思考を一時的にリセットし、目の前にある確かな現実に目を向ける為の装置として作品を機能させる試みである。

 

「Scramble painting (スクランブルペインティング) 」シリーズは、その手法を展開させ、別々に描いた複数枚の絵を一つの画面上で混ぜ合わせた絵画である。

 

高価な物や安価な物、新しい物や古い物、珍しい物やありふれた物、綺麗な物や汚い物、幸せな出来事や残酷な出来事など、オンライン上や街中で記号的に消費されるイメージがマテリアルとして混ざり合う画面を作る事で、現実と非現実、本音と建前、真実と嘘が混在し、それぞれの境界が不明瞭になった現代の状況を物理的に可視化する事が出来るのではないかと考えている。

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